不動産テックとは?日本における建築CG・VR・AR市場の調査結果をご紹介します
近年、不動産業界においてデジタル技術の導入が進んでいます。
その中でも「不動産テック」と呼ばれる分野が注目され、特に建築CG(コンピュータ・グラフィックス)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)は顧客体験を向上させる技術として急成長を遂げています。
本記事では、日本市場での具体的な事例や市場動向、今後の展望について詳しく解説します。
不動産テックとは?
不動産テックとは、「不動産」と「テクノロジー」をかけ合わせた造語であり、インターネットやITを利用して取引や管理、顧客体験を変革する取り組みのことです。
主に建築CG、VR、ARなどの技術が応用され、不動産サービスの効率化と価値向上を実現しています。これらの技術は、顧客へのわかりやすい提案や非対面型サービスの提供において中心的な役割を果たしています。
建築CG・VR・ARの特徴と活用事例
不動産テックを支える建築CG、VR、ARは、それぞれ異なる特性を持ちながら不動産業界において重要な役割を果たしています。これらは、設計や内見、販売促進といった場面で活用され、効率化と顧客体験の向上を実現しています。
以下では、それぞれの特徴と日本国内における具体的な事例をご紹介します。
建築CG(コンピュータ・グラフィックス)
建築CGは、建物の完成予想図や設計プランを3Dモデリングで可視化する技術です。
これにより、設計図や見取り図だけでは伝わりにくい建物の外観や内観、空間の広がりをリアルに表現することができます。
従来のパースに比べ、建築CGは高い制度と柔軟性を持つため、設計や販売促進の場面で積極的に活用されています。
建築CGの活用事例を紹介します。
①リノベーション物件の提案
住友不動産株式会社は、リノベーション物件の提案時に、建築CGを用いてリフォーム後の完成イメージを作成し顧客に提案しています。
これにより、顧客はリノベーション後の具体的な生活空間を確認することができ、意思決定をサポートしています。
①設計段階での活用
世界的に有名な建築家、隈研吾氏が率いる設計事務所では、CGチームを設置し、建築デザインの可視化を行っています。同事務所では、建築物の設計段階で3Dモデルを作成し、プレゼンテーションやクライアントとのコミュニケーションに活用しています。
不動産VR(仮想現実)
不動産VRは、仮想現実の技術を活用して、不動産の内覧や物件の体験を仮想空間で実現する手法を指します。VRヘッドセットや360度カメラを使用することで、実際に現地を訪れなくても物件の内部を自由に移動し、詳細を確認できます。
実際の物件にいるかのような没入感を提供し、顧客により具体的なイメージを持たせることができます。
不動産VRの活用事例を紹介します。
①VRモデルルーム
大和ハウス工業株式会社は、VR技術を使ったバーチャルモデルルームを展開しています。VRモデルルームでは、モデルルーム内を歩いているかのようなウォークスルー体験ができるほか、周辺環境なども確認することができます。
②賃貸物件のVR内見
LIFULL HOME’Sなどの不動産情報サイトでは、360度カメラで撮影された物件情報を提供しています。自宅にいながら気になる物件を内見でき、よりリアルな情報を効率的に確認できます。
AR(拡張現実)
ARは、現実の風景や物体に仮想の情報を重ね合わせる技術です。
例えば、スマートフォンやタブレットなどのカメラを通して見ると、現実の風景に立体的なオブジェクトを重ねて表示することができます。
ARの活用事例を紹介します。
①AR内見
東急住宅リース株式会社は、AR技術を活用した「AR内見サービス」を導入しています。このサービスでは、スマートフォンやタブレットを通じて空室の部屋に仮想的なインテリアを配置し、顧客が実際の生活をイメージしやすくすることで、内見からの契約率向上を目指しています。
②家具配置シミュレーション
株式会社ニトリは、「NITORI AR」という家具配置シミュレーションを提供しています。この機能を使うと、スマートフォンを通じて自宅の空間に実物大の家具を仮想的に配置し、サイズ感や色合いを確認することができます。
不動産テックの市場動向と課題
市場規模の成長
矢野経済研究所の調査によると、2025年度の日本の不動産テック市場規模は1兆5,915億円と推計されています。さらに、2030年度には2兆3,780億円に達すると予測されています。
その背景には、デジタル技術の進化と、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけとした非接触サービスへの需要増加があります。
消費者ニーズの変化
不動産業界では、非接触サービスや視覚的な体験を求める消費者ニーズが増加しています。
新型コロナウイルスの影響で、オンライン内見や電子契約といった非対面型のサービスがスタンダード化しました。
また、VRやARを活用したリアルで視覚的な物件体験や、家具配置シミュレーション、リノベーション後のイメージ確認など、具体的な生活を想像できるツールへの需要が高まっています。
このようなニーズの変化により、顧客体験を重視した不動産テックの活用が不動産業界での成長のカギとなっています。
課題
不動産テックの導入は業界の効率化や顧客サービスの向上に繋がっていますが、いくつかの課題が存在します。
まず、不動産業界では従業員の高齢化が進んでおり、ITリテラシーの向上が大きな課題となっています。新しいテクノロジーの導入に対して抵抗感がある場合、不動産テックのような革新的な技術も十分に活用されない場合があります。
また、導入コストや運用負担の大きさも問題の一つです。不動産テックを導入するには初期投資が必要であり、特に中小規模の企業にとっては負担になるケースもあります。
これらの課題を克服するためには、従業員のIT教育を強化することや、クラウドサービスを活用してコストを抑えることが求められます。
不動産テックの今後の展望
消費者向けサービス(BtoC領域)の成長
住宅ストック数や中古住宅流通市場の拡大を背景に、不動産マッチングサービス市場が拡大しています。これにより、国内の不動産テックのBtoC領域の市場規模は2030年度に約1兆8,600億円に達すると予測されています。
事業者向けサービス(BtoB領域)の進展
不動産仲介などの拡大が進んでいることにより、国内の不動産テックのBtoB領域の市場規模は2030年度に約5,180億円に達すると予測されています
まとめ
不動産テックは、建築CG、VR、ARといったデジタル技術を活用して不動産業界を革新しています。市場の拡大や技術の進化に伴い、顧客体験の向上や業界全体の効率化が期待されます。
今後の不動産テックの進展に引き続き注目していきましょう。
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